緑内障について
まずは「眼圧」についてお話します
目には、角膜(黒目)、水晶体(レンズ)などの透明な部分があります。
この透明な部分は血管がありませんので、これらの組織を維持するために、房水(ぼうすい)という液体が目の中を循環しています。
房水は毛様体で作られ、水晶体の前を通り目の前方から隅角(黒目と白目の境目にある部分)を経て、シュレム管という管に入り、その後静脈から目の外に出ていきます。
この房水の圧力によって目の形は保たれており、この圧力を眼圧といいます。
眼圧の平均値は10〜20mmHgといわれています。
緑内障とはどういう病気ですか?
房水の流れが悪くなり眼球の中に貯まると、目の中の圧(眼圧)が高くなります。
以前の緑内障の定義では、眼圧が21mmHgを超えて上がることで、眼底にある目の神経を圧迫し傷め、視野障害や視力低下を起こし、最悪の場合失明する病気とされてきました。
しかし眼圧が平均範囲内(10~20mmHg)でも視神経の構造が弱い人などは、緑内障と同じような視神経障害を起こします。このような緑内障を正常眼圧緑内障と呼び、日本人に多いタイプだということが分かりました。
(眼圧は正常ですが、視神経乳頭に眼圧の高いタイプと同じような変化を起こしますので、眼圧だけでなく眼底検査が重要となります)
現在の緑内障は
「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患である」と定義されています。
緑内障の疫学
2000年に岐阜県の多治見市で、大規模な緑内障の疫学調査が行われました。
それによると40才以上の日本人の緑内障の有病率は5%、20人に一人の割合でした。そしてその緑内障患者の70%強が眼圧が上がらないタイプ(正常眼圧緑内障)でした。
また疫学調査で緑内障と診断された方の90%は潜在患者(疫学調査で初めて緑内障であることが見つかった)でした。
緑内障の症状
視野狭窄(見える範囲が狭くなっていく)、視力障害などがありますが、慢性の場合は初期のうちは自覚症状がほとんどなく、知らないうちに進行している例が多いです。
急性の場合は目の痛み、頭痛、吐き気などの激しい症状を来します。
実際には目が痒いとか目やにがでるなど、他の症状で来院された折に、眼底検査等で偶然発見されることも多いように思われます。
緑内障の治療方法について
緑内障の治療としてエビデンスの確立した治療方法は、眼圧を下げることです。
眼圧を下げることで視神経の負担を減らし、視野狭窄の進行を抑えるわけです。
進行を抑える為であって、視神経の障害は治るものではありません。
そのため早期発見早期治療が大切なのです!
目薬での治療方法
現在緑内障の目薬は大きく分けて9種類あります。
すべて眼圧を下げる目薬ですが、中には視神経の血液循環を改善する可能性を持った薬もあります。これらの薬を組み合わせて、目標とする眼圧まで下げますが、最近は配合剤といって2種類の緑内障の目薬を配合し、1本さすことで2種類の目薬がさすことが出来、患者様のアドヒアランスや副作用に考慮したお薬も出ています。飲み薬での治療
飲み薬で眼圧を下げる方法もありますが、全身的な副作用が強い為、短期間の使用に限られます。レーザー治療
レーザーを使って房水の流れを良くする方法です。
合併症が少ない治療ですが、眼圧下降効果がやや弱く、短期間なのが難点です。手術での治療方法
手術により房水の流れを良くし、眼圧を下げる方法です。
緑内障の手術の方法について
現在行われている手術方法は色々とありますが、代表的な手術についてお話します。
先ほどもお話したように、目の中で房水が作られ隅角から出て行くのですが、この隅角部を含む部分の目の壁(強膜)を一部切り取って、目の壁に小さな穴を開け、そこから房水を目の外に流せば、目の中の房水の量が減り、眼圧が下がります。
眼圧が下がると、視神経の負担が下がります。この手術を濾過手術「隅角線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)」と言います。
この手術の利点は、他の緑内障手術に比べ眼圧を下げる効果が優れていることですが、手術後の安定に時間がかかるという欠点がありました。また水が眼外に流れすぎて、眼圧が下がりすぎたり前房が浅くなったり、また感染を起こす危険性もあります。
そこで最近強膜の一部を切り取る代わりに、EXPRESSというステンレス製のパイプを強膜に差し込む手術が開発されました。
パイプの内径が均一なので眼外への水の流れが一定になり、術後の安定が早くなると言われています。
当院では外来手術で緑内障手術を行うため、このEXPRESSを用いた濾過手術を積極的に行っています。